現在、パーマカルチャー商店で予約販売させていただいているキャンベルアーリー(ぶどう)の生産者「かわせファーム」さん。かわせファームは、パーマカルチャーの概念を取り入れ、浜松ではめずらしく、ぶどうをはじめ、果樹の肥料不使用、極力農薬を使用しない栽培に挑戦しています!
「かわせファーム」の誕生ストーリーを本記事から2記事にわたりご紹介しますので、ぜひご覧ください!
かわせファームってどんな農園?
かわせファームの川瀬健太郎(けんたろう)さんと昌子(まさこ)さんは、2021年より浜松市西区大久保町で、ぶどう、レモン、梨、キウイをメインに、その他にもアボカドやポポーなど、さまざまな果樹を栽培しています。安全でおいしいものを作るのはもちろんのこと、環境と人に優しい農業を目指して、パーマカルチャーの概念を取り入れ、肥料不使用で、農薬も極力使用しない栽培に取り組んでいます。
大地の再生やさまざまな自然に沿った手法を取り入れながら、土作りや水捌けを考え、植物たちが持つ本来の力を引き出せるような環境づくりを心がけ、日々、植物たちと向き合って挑戦しています。
※パーマカルチャーの概念を取り入れた栽培方法について、詳しくは2記事目「けんちゃんがパーマカルチャーぶどう農家を目指した理由〜かわせファーム誕生の秘話Vol.2〜」でご紹介します!
けんちゃんとまさこちゃんの生い立ち
実は、けんちゃんとまさこちゃんは、2人ともご両親が農家だったそうです。(親しみをこめて2人を「けんちゃん」「まさこちゃん」と呼ばせていただきます!)
けんちゃんの実家は、専業農家でガーベラなどのお花をメインに栽培する花農家でした。けんちゃんは子どもながらに、夜鍋してお花を選別していた両親の背中や経済的な厳しさを見ていて「農家は絶対にやりたくない!」と思っていたそうです。
実は、お花は「見た目が綺麗であることが第一」とされるため、食べ物である野菜や果物に比べて、濃度が高く、回数も多く農薬を使用して栽培されています。実際にけんちゃんは、自分が農薬を使用している時に臭いがキツく、気持ち悪くなった経験をしたことで、現在なるべく農薬を使用しない栽培に挑戦しているのです。
それに対して、まさこちゃんの実家は浜松市細江町気賀で、みかん農家を営んでいました。兼業農家で経営が大変だった両親の背中も見ていましたが、親戚や町の人たちと助け合い、みかんを収穫し、ワイワイと賑やかに皆んなで作業するのが好きだったといいます。
農業の大変さと楽しさの両方を見て育ったまさこちゃんは、「もっと楽しく農業ができるのではないか」「市場に振りまわされない、自立した農業ができるのではないか」そんなことを胸に秘めていました。
家づくりから食べられるお庭づくりへ
余談ですが、けんちゃんとまさこちゃんは、2人とも空手をしていて、空手が出会いで結婚したそうです。結婚当時、けんちゃんは会社員でアパート暮らしをしており、その後、お子さまの誕生をキッカケに、けんちゃんの実家の土地に現在のお家を建てました。
家づくりのコンセプトは、「自分たちの暮らしのリズムを大切にする」「どれだけ豊かな暮らしができるかへの挑戦」。そのコンセプトを表すかのように、現在の2人のすてきな家には薪ストーブがあり、火を囲んだ暮らしや家族の時間を楽しめる空間が広がっています。
そして、昔から植物や生き物を育てるのが好きだったけんちゃんと、自然のサイクルや植物たちの姿を見るのが好きだったまさこちゃん。そんな2人が、自分たちの新たな暮らしを築いていくなかで、のちにパーマカルチャーを取り入れた農業を目指すキッカケになる「食べられるお庭づくり」に行き着いたのです。
食べられるお庭(エディブルガーデン)とは、野菜やハーブ、果樹など、食べられる植物を育てるお庭のことです。
フォレストガーデン(パーマカルチャー)との出会い
食べられるお庭(エディブルガーデン)づくりは、2017年頃「自然と暮らしの一連の循環を良くしたい」という2人の思いから始まりました。
そして、2人が理想のお庭づくりを模索しているときに、フォレストガーデンを作っているPermaculture Design Lab.の大村淳さんと、まさに運命の出会いをしたのです!まさこちゃんは、淳さんに出会いフォレストガーデンの話を聞いたときに、「お庭を頼みたい!」そう直感で感じ、すぐにけんちゃんを連れてフォレストガーデンに行きました。
フォレストガーデンと出会った2人が感じたことは、「森に帰りたい」「自然の流れに沿って人が関わることで豊かなパラダイスを作れる!」ということでした。
フォレストガーデンとは、「森のような菜園」という意味です。自然の中にある若い森をモデルに暮らしのために必要な食べものや、暮らしに利用できる様々な実りを持続可能な方法でより多く手に入れるための森のデザイン手法です。
※フォレストガーデンについて、より詳しく知りたい方は「フォレストガーデンとは?わたしたちは浜松で食べられる森を育てています」をご覧ください。
食べられるお庭づくりの依頼を受けた淳さんは、けんちゃんたちの両親が農家だったという背景や、広大な敷地があるということに、とても可能性を感じたといいます。
‘フォレストガーデンの実験はやっていたけど、もっとそれぞれの街にフォレストガーデンのような場所が増えてほしいという思いがあったんですよね。2人が作っていく暮らしと、もともと農家だったご両親がやってきた農業を新たに形を変えて生き返らせていく、ということにすごく意味があると思うんです!’
浜松は街から一歩郊外に出ると、農地や土地をもっている人が多く、先代も農家をしていたが、自分たちはまた新たなやり方で挑戦していきたい!と思っている若い世代も多くいます。そういった意味でも、かわせファームのけんちゃんとまさこちゃんが、パーマカルチャーの概念を取り入れた新たな手法で果樹栽培にチャレンジしていることは、今後の未来を切り拓いていくパイオニア・先駆者といえますね!
現在、淳さんと共に二人三脚でつくりあげた家の前に広がる食べられる庭(エディブルガーデン)には、ブラックベリー・グミ、ハーブ、野菜など、多様性のある食べられるもので彩られています。そして、3人の子どもたちと賑やかに、食べられるもので囲まれる暮らしを楽しんでいます。
ちなみに、お庭づくりそしていたこの頃、けんちゃんはまだ会社員で、バリバリ働きながら違和感を感じていたそうです。
けんちゃんがパーマカルチャー農家をやろう!と決心したストーリーや、パーマカルチャー的な農業ってどんなもの!?というあたりについては、次回の記事で詳しくご紹介したいと思います。おたのしみに!
(取材/川村若菜、能見奈津子、文/能見奈津子)